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有機野菜の美味しさの理由

美味しい野菜私たちがオーガニック野菜をお勧めしている理由の一つは「美味しさ」です。

野菜と言えば「健康のために我慢して食べなきゃいけない薬のようなもの」とイメージされているかもしれません。でも、私たちがご提供しているのは「美味しくて進んで食べたくなる食材」だと、自信を持ってお勧めしております。

その「美味しさ」には、ちゃんと理由があります。

  • 有機農家が美味しい野菜を育てる理由
  • 有機で育った野菜が美味しくなる理由

理由1:美味しい品種を選んでいるから

最初から「美味しい品種だから美味しい」なんて同語反復のような理由で、すみません。

ある時、私たちが野菜を仕入れている有機農家さんがおっしゃったんです。
「うちの野菜が美味しいのは、栽培方法とか技術じゃないんですよ。美味しい品種の種を蒔いてるから。ホントそれだけですよ。」
もちろん農家さんのご謙遜が入った言葉だと思いますが、それを聞いた時に目から鱗が落ちました。

そう、改めて考えると、実は多くの農家さんは、美味しい品種を選んでいないんです。

多数ある品種と それぞれの特徴

野菜は人間が要求に合わせて品種改良を重ねてきた植物です。お米なら「コシヒカリ」「はえぬき」「ゆめぴりか」など、ジャガイモなら「男爵」「メークイン」などと、一つの品目には、いくつもの品種があるのはご存知だと思います。

あまり知られていませんが、他の野菜にも、たくさんの品種があります。例えば、一般的なオレンジ色の15cm前後のニンジンでも

ニンジンの品種と特徴

  • 黒田五寸
  • 新黒田五寸
  • 甘美人
  • ときなし五寸
  • 向陽二号
  • ・・・(他、多数)

といった品種があり、見た目はほぼ同じでも、それぞれ特徴が異なります。「食味が良い」「病気に強い」「寒さに強い」「形が良い」「大きく育つ」などなど。
残念ながら、全ての特徴を兼ね備えた「パーフェクト・ニンジン」は存在せず、食味が良い品種は、病気に弱かったり成長の過程で割れやすかったりしますし、一方で病気に強くて育てやすい品種は、味がイマイチだったりします。

農家さんは多数の品種の中から、お客様(販売先)の要求に合うもの、自分の畑の環境や、自分の好みに合うもの、栽培出荷計画の時期(季節)に適したものを選んで栽培されます。

一般的な農家が選ぶ品種とは

実は、全ての農家さんが「美味しさ」を第一優先に野菜を作っているわけではないんです。

スーパーの野菜売り場それは、一般的な農家さんが出荷する先、多くの農協や市場が「美味しさ」を第一に評価していないからです。多くの農協や市場は「大きさ」「形」「見栄えの良さ」で野菜を評価し、買い取りを決めています。そしてそれは「決まった大きさの箱に、決まった数が入るか?(=効率的に輸送や陳列ができるか)」「黙って並べるだけでも売ることができるか?(=販売員の人件費が削減できるか)」といった、大手スーパー等の流通の都合から来ています。また「美味しさ」は外見では判断できない、食べてみないとわからない、といった検査手法や手間の問題もあるでしょう。
いずれも戦後、人口増加が著しく、大量生産・大量消費が指向された時代に適合し、「いかにして、より大量に、より安く、全国に野菜を行き渡らせるか」という目的に向けて、生産者も流通も懸命に努力してこられた結果だと思います。

ただ、その中で「美味しさ」は後回しにされてきました。美味しくても、病気に弱かったり、形が崩れやすい品種を、商品として販売できるレベルに育て上げるには、相当の技術が必要ですし、大変な手間がかかります。せっかく苦労しても、お客様から評価されない、買取価格に反映されないのですから、美味しい品種は敬遠されてしまいます。

匿名の野菜また一旦、農協や市場に出荷すると「〇〇県産キャベツ」「△△(ブランド)ネギ」といった地域名を冠した名前で流通することとなり、農家さんの個人名が出ることは、ほとんどありません。消費者にとっては「匿名の野菜」となってしまうため、農家さんとしても、遠くの消費者より目の前の農協、市場、流通の都合の方を向いて栽培することになりがちです。

一般の農家さんの中には「出荷用は大きさ、形が優先」と割り切って作り、自宅で食べる分は別の小さな畑で別の「美味しい品種」を栽培している、という方もいらっしゃいます。

有機農家が美味しい品種を選ぶ理由

有機農家さん一方、有機農家さんで農協や市場に出荷されているケースは、少ないです。多くの農協は、農薬や化学肥料の販売が収入源の一つで、その使用を推進しているため、そもそもの考え方が合いませんし、一般市場では「美味しさ」や「有機栽培」といった付加価値が認められず買取価格が安い、といったことが原因です。
結果的に、ほとんどの有機農家さんは、宅配便などで消費者に直接販売する、または道の駅などの直売所に持ち込む、という販売方法になります。
どちらも、自分の名前を出して売る、いわゆる「顔が見える野菜」となります。

数あるの商品の中から自分の野菜を選んでもらうには、特徴がないといけません。実際に野菜を食べる消費者にとっては「美味しさ」は大きなアピールになりますし、直売なら「大きさ」「形」に多少の難があっても、説明することもできます。
何より、自らの名を冠して世に出す野菜だからこそ、まず「美味しいですよ」と言いたくなるのは人情でしょう。

有機農家さんその上、農薬も化学肥料も使わず手間のかかる農法を、わざわざ選択している有機農家さんですから、やはり元から「食べること」に興味が強く、自分でも「美味しいもの」が大好き、という方が多いんです。出荷する野菜にしても「美味しいものを作ろう」「お客様に『美味しい』って喜んでもらいたい」と第一に考えられるので、品種選びも「美味しい品種」が優先になります。

理由2:土地に合った野菜を作るから

野菜って、どこでも土に種蒔けばできるんでしょ?そりゃまぁ水あげたり肥料あげたり草取ったりの手間はかかるんだろうけど、とりあえず作れるでしょ?と思われているかもしれません。

確かに「とりあえず作れる」という意味では間違っていませんが、これが「プロとして、商品として出荷できるレベルの味・大きさか」「現実的な手間(人件費、生産コスト)の範囲でできるか」となると、話は変わってくるのです。

環境に合う野菜 合わない野菜 – ある仕入先の挑戦

ビオシェルジュの仕入先のある農家さん、有機栽培歴は20年以上のベテランで、ニンジン作りの名人でいらっしゃいます。そのニンジンは、誰もが知る一流ホテルのシェフにも認められた逸品です。ニンジン以外にも、大根、サツマイモも素晴らしいものを作られますし、ネギ、キャベツといった葉物野菜も得意とされています。

でもある日、その方から「これ作ってみたんだけどさぁ…」と見せてもらった玉ねぎには、驚きました。「小さい…」野球のボールよりも小さい、ビリヤードの玉ぐらいの大きさで、形も細長いものばかり。結局、その玉ねぎは「B品」として特価で販売することになりました。

実は、ニンジン、大根などがよく育つ酸性の土壌は、玉ねぎ作りには向いていません。農家さんもそれを承知で、あえてチャレンジされたのですが、やはり土地に合わない野菜を作るのは、一流のベテランの腕を持ってしても、難しいのです。

環境と野菜の相性は とてもデリケート

暖かい/寒い、雨が多い/少ない、山間部/平野部、栄養の多い川沿いの土/ミネラル豊富な火山灰地/水はけの良い砂地、…こんな感じで日本各地で環境に違いがあり、野菜などの特産品も違う、というのは学校で習います。でも植物から見ると、環境の違いって、実はもっと細かくて微妙なんです。

クロップマーク“クロップマーク”ってご存知ですか?2018年夏の世界的な猛暑の影響としてイギリスではニュース(リンク先:ロイター通信)になりましたので、お聞きになった方もいらっしゃると思います。写真は日本の宮城県で見つかった多賀城内館館跡(引用元:多賀城市の文化財)です。何百年、何千年も前に埋まった土地の凹凸、そんなものが実際に植物の生育に影響します。

玉ねぎの畝と育ち方の違いまた、ビオシェルジュの仕入先のある農家さんによると、そこの畑では1つの畝(畑の土を盛り上げた部分)に、玉ねぎを4列ずつ植えられるのですが、その4列の中でも、日当たりの良い南側は大きく育ち、北側は玉が小さくなる、とおっしゃっています。

「一畝違うと味が違う」と言う農家さんもいらっしゃいます。それくらい、環境と野菜の相性は、とてもデリケートなものなんです。

有機農業は環境に合った野菜を育てる

環境に合わない野菜を作ろうとすると、大きく育たないだけでなく、病気にかかりやすくなります。また植物として弱い状態で育つので、それを食べようとする虫を呼び寄せてしまいます。葉や茎の細胞が弱く柔らかいので、虫からは食べやすいように見えるのです。

農薬を撒く農家一般的な農家さんは、環境に合わない野菜でも、農薬を使って病気や虫を防ぐことで、収穫期まで育てあげることができます。化学肥料で補って、大きく太らせることもできます。
実は、地域に合った野菜、季節に合った野菜を作ると、他の農家も同時に出荷してくるので、市場での買取価格が安くなる傾向があります。時期外れの野菜や、その土地では珍しい野菜(実は土地に合わない野菜だったりします)は高く買い取ってもらえるので、農薬や化学肥料を駆使しながら、それを狙って作る農家さんも少なくありません。

一方で有機農家さんは、使える資材にも限りがあるため、無理ができません。自然と環境に合った野菜を中心に作ることになります。

良い環境でストレスなく育った有機野菜は美味しい

青空と畑人間は様々な植物や動物を食べますが、ストレスのない環境で育った食材は、みな美味しく感じます。まだ科学的には上手く説明できない経験則ですが、みなさんにも思い当たる例は、いくつもあると思います。

例えば安売りの卵は、親鶏が身動きできないくらい鳥カゴにギッシリ詰め込まれた鶏舎で生産されますが、美味しいブランド卵の多くは、広い敷地、大きな鶏舎で平飼いされ、伸び伸びと走り回っている親鶏が産んでいます。

例えば日本が誇る「和牛」ブランド牛の産地では、まるでペットのように手をかけて育てられている姿を、テレビ等でご覧になったこともあると思います。

最近流行のジビエも、猟師さんに聞くと、罠にかかった直後の鹿や猪が暴れまわっている状態で止めを刺すと、不味くなるそうです。目隠しをして一旦連れ帰るなどして、興奮が落ち着いた状態で止めを刺す方が、美味しい肉が取れるそうです。

魚でも、種類によりますが、養殖ものより天然ものが美味しいと重宝されているのは、よく目にします。

大地に立つ大根同じように野菜も、その生態に合った環境で、本来のライフサイクルに合った季節(旬)に育てられると、ストレスなく健康に育ち、美味しくなります。

つまり、有機農業で無理をせず、環境と自然の営みに合わせて育てられたオーガニック野菜は、美味しくなるのです。

美味しさの追求は これからも

私たちがご提供している有機野菜は、とても美味しいと自負していますが、実際に手に取って食べていただかないと、なかなか伝わりません。なんとかWebでも魅力をお伝えしようと「なぜ、オーガニック野菜は美味しいのか?」「美味しさの理由が言葉にできないか」と、いつも頭を悩ませています。

一方で私たちが野菜を仕入れている農家のみなさんは「どうしたら美味しい野菜ができるか?」と、日々考えて、試行錯誤していらっしゃいます。

そんな農家のみなさんと私たちとの対話の中で「有機野菜の美味しさの理由」が少しずつ見えてきました。

「有機=必ず美味しい」ではありません – 仕入れは信頼できる業者から

お気づきだと思いますが、ここまで挙げた理由は全て「有機栽培だと必ずこうなる」というものではありません。

有機栽培ではない、農薬や化学肥料を使う農家さんでも、美味しさにこだわり、環境に合った品目、美味しい品種を選び、栽培方法を工夫し、自分の名前をブランドとして販売している方は、いらっしゃいます。テレビ番組等で「有名シェフが惚れ込んだ〇〇農園の△△」と紹介されるケースなど、実際に美味しい野菜を作っていらっしゃいます。
また農協や市場も、地域によって様々で「美味しさ」への取り組みを始めたり、強化したりしているところもあります。

ただ、農薬や化学肥料を使えば、環境に合わない野菜でも作れてしまいますし、美味しさにこだわらなくても十分な収入が得られる流通の仕組みが、既にできあがっています。一方で有機農家には、その栽培方法の特性や流通の制約から、「美味しさ」を目指す理由がいくつもあります。
つまり割合の問題として、現状では有機野菜を選ぶ方が、美味しい野菜に当たる確率が相当に高い、と私たちは考えています。

また有機農家さんでも、「無農薬で栽培すること」自体が目的化してしまって、美味しさの追求が二の次になっている方や、栽培技術が伴わないために、美味しい品種より、育てやすい品種を選んでしまっている方や、経験不足で自分の環境に合った品目を見つけられていない方も、中にはいらっしゃいます。

だからこそ、その生産者が「美味しさ」にこだわっているか、確かめることが重要で、そのためにも「美味しさ」を評価している、信頼のある流通業者から仕入れることを、強くお勧めいたします。


これからも美味しさを追求し続けます

長々と「有機野菜の美味しさ」について書いてきましたが「美味しさ」は、わかったようでわからない、とても奥の深いテーマです。
甘味(糖度)が数値化できたり、旨味を構成するアミノ酸(グルタミン酸、イノシン酸など)が解明されたり、科学的な分析は進歩しましたが、それだけで表現できるものではありません。時には苦味や独特のクセを美味しいと感じることもあります。
また、一緒に食事をする人や、食事の場の雰囲気、飲食店ならサービスの質も影響します。食材が育った場所や、作った人の想いを知ると、より美味しく感じますし、愛する人の手料理や、我が子が初めて作った料理は、問答無用で美味しかったりします。

「有機野菜の美味しさ」にも、まだまだ言葉にできていない要因があると思っています。
私たちは今後も生産者との対話を続けながら、美味しさを追求し続けます。また違った答えが出てくることがあるかもしれません。

ただ「お客様に『美味しい』って喜ばれたい」と考えていらっしゃるプロの皆様のお役に立つ存在でありたい、という理念は変わりません。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


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